正直にいうと、テレワークが苦手です。通勤電車で新聞を読んで頭を仕事モードに切り替えていた時間がなくなります。パソコンのちょっとしたトラブルを相談する後輩が隣にいません。たばこ部屋での他の部署の人との何気ない雑談が仕事に役立つこともあったのに──。そんな悩みを抱える私のような旧世代は、ニューノーマル時代に取り残されていくのでしょうか。

 マサチューセッツ工科大学の研究によると、物理的距離とコミュニケーションには強い相関関係があります。同僚と仕事の話をする確率は距離が遠いほど低くなり、10m以上離れると会話の確率は偶然に頼るレベルに減るそうです。もっともこれは30年以上前の「旧世代」の研究。テレビ会議やチャットを自在に駆使する世代には当てはまらないのかもしれません。

 日々の目標をもって自律的に働く人、育児や介護を抱えながら働く人にとって、テレワークは生産性を高める武器になります。今週号の特集では、試行錯誤しながらテレワークで働き方を変える企業を数多く取り上げています。リアルとの融合で偶発的なコミュニケーションを誘発したり、温泉ワーケーションで働き手のストレスを解消したり。生産性を高める企業の競争は新しい時代に入っています。

 4月25日に東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で3回目となる緊急事態宣言が適用されました。この1年間、企業が働き方をいかに変えてきたかが問われます。仕事の終わりに上司の愚痴を言い合う「ちょっと一杯」がなくなるのは、寂しい限りですが。

日経ビジネス2021年5月3日号 7ページより目次

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