なぜ日本は多くの途上国よりもワクチン接種が遅れているのでしょう。日本は先進国で最も人口当たり病床数が多いはずなのに、なぜ医療が逼迫するのでしょう。なぜ経済に痛みを伴う緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を繰り返すのでしょう──。日本のコロナ対策には「なぜ」があふれています。今週号の特集ではその答えを一つひとつ解き明かします。

 米国ではバイデン大統領の公約よりワクチン接種のペースが速く進み、4月19日から成人全員が接種対象になりました。シンガポールではスマホで簡単にワクチン接種の予約ができ、中国はワクチンを外交カードとして新興国に輸出攻勢をかけています。

 菅義偉首相は訪米中の4月17日に米ファイザーにワクチンの追加供給を求めましたが、7月から五輪開催を予定する国の危機管理としては遅きに失した感があります。

 緊急事態宣言解除後も飲食店に営業時短などを求めるまん延防止措置が自治体に広がっています。そもそも昨年4月に最初の緊急事態宣言を発した時、「コロナに対応した医療体制を組むための時間を稼ぐ」という政治のメッセージに国民が納得したから、一時的な措置として協力したのではなかったでしょうか。

 病床も整備されず、集団免疫も獲得できなければ、いつまでも自粛要請が繰り返され、経済が際限なくむしばまれます。飲食業の倒産件数は2020年に過去最高を記録しました。「国民の民度の高さ」に頼るのはもうそろそろやめにしましょう。

日経ビジネス2021年4月26日号 7ページより目次

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