日本で初めて新婚旅行(ハネムーン)に行ったのは幕末の志士、坂本龍馬だといわれます。寺田屋事件で九死に一生を得た龍馬は、西郷隆盛らの勧めもあって妻のお龍と一緒に春の薩摩を旅します。時は1866年、薩長同盟が成立して日本が江戸から明治へと急転回する年。米国ではその前年に南北戦争が終結しています。

 さて、4月末にバイデン米大統領の就任から100日が経過します。米国では政権最初の100日間を「ハネムーン期間」と呼び、メディアが性急な評価や批判を控える紳士協定があります。蜜月を楽しむ新婚期の夫婦になぞらえたものです。

 今週の特集「バイデン100日」の冒頭では、これまでバイデン氏を支持してきた左派メディアまでが移民問題をきっかけに批判の矛先を向けている現状を描いています。トランプ前大統領時代に顕在化した米国社会の分断はさらに深刻化し、バイデン政権はハネムーンを満喫するどころではないようです。

 昨年の大統領選後も共和党支持者の4分の3が、バイデン氏が不正で勝利したと信じていて、約半数が今後も自分たちのリーダーはトランプ氏だと考えています。ツイッターアカウントの凍結で奔放な情報発信が途絶えたトランプ氏ですが、その分、支持層の不満は内部に深く蓄積していくでしょう。

 龍馬はハネムーンの後、内戦を避けるための大政奉還の実現へ、文字通り東奔西走します。南北戦争以来といわれる米国社会の分断。その解消に向けて、バイデン氏の強いリーダーシップを期待します。

日経ビジネス2021年4月19日号 7ページより目次

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