「5分話せば人は分かる」──。10年ほど前に取材した孫正義氏の言葉を思い出します。2000年、孫氏が中国のIT企業20社に面会した際、ひときわ強烈なカリスマ性を感じたのが、1年前にアリババ集団を設立したばかりの馬雲(ジャック・マー)氏でした。今週の特集テーマの主人公です。

 「ジャックとは事業の話はせず、夢や未来の話ばかりした」という孫氏。わずか10分ほどの面会で20億円の投資を決めた当時の「直感」が、その後のソフトバンクグループとアリババの飛躍につながります。

 そんなマー氏が中国当局と対立するきっかけになったのが、「3分で融資を決定する」という金融事業です。彼が率いるアント・グループのオンライン小口融資は、スマホアプリを使って融資申請すれば、取引実績などのビッグデータをAI(人工知能)が瞬時に分析して信用度を判断します。

 中国でのオンライン融資は資金難のスタートアップによるイノベーションを加速する一方、過熱する融資に歯止めをかけようとする当局との対立を招いたとされます。

 孫氏の直感とマー氏が操るビッグデータ。直感が脳に蓄積された経験値による判断だとすれば、人を信用するという行為はもともとデータに基づくものなのかもしれません。出会った時の印象は、誰しも結構外れないものです。

 春です。新しく日経ビジネス編集長に就任しました。直感がうごめくような新しい出会いを期待しています。

日経ビジネス2021年4月5日号 7ページより目次

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