出口の見えない疫病との闘いが続いています。厳しい事業環境を何とか耐えていかなければなりません。今号の特集「ファウンダーの教え」では暗闇の中の道標を探すべく、偉大な起業家が度重なる困難にどのような心持ちで向き合い、どういった教訓を得たのかを探ります。

 経営の神様と呼ばれたパナソニック創業者の松下幸之助さんも幾多の困難を乗り越えました。「好況よし、不況さらによし」といった不況にまつわる言葉を多く遺した幸之助さん。著書の中で「いざというときに社員から借金できるか」と問いかけます。

 不景気で資金が不足し銀行も金を貸してくれない時に社員の貯金がいくらあるか考え「いざという場合は彼らの金を使わせてもらおう」と腹をくくっていたのだそうです。その信念に立って事に当たり、結局は借りずに済んだということが幾度かあったといいます。

 時代が違うとはいえ、社員との信頼関係や事業継続への揺るぎない意欲はすさまじいものがあります。どんな状況からでも何が何でも明日への道を見いだそうとする幸之助さんの鼻息が届きそうです。

 石油ショック後には、先が見えず、うっかりすると命がなくなる「たいへん困難な時代」になったと記しています。いつの時代も偉大な経営者は悩み苦しんでいます。どんな状況でも変わらないことが1つ。「最大の努力をもって勇敢に立ち向かい、最善の戦いを進めていくということに尽きます」。幸之助さんが「あきらめるな」と叱咤(しった)しているように感じます。

日経ビジネス2021年2月1日号 7ページより目次

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