一体何が違うのでしょうか。

 「ユニクロ」でおなじみのファーストリテイリングはバブル崩壊後の失われた30年で、日本で最も成長した会社です。世界一目前の巨大アパレルを率いる柳井正さんは日本一の富豪だそうです。片やこちらは、しがない会社員。

 若いころは似たようなものでした。柳井さんも私も衰退する地方の街で生まれ、高校を卒業して上京。同じ大学、学部、学科で学びました。いや、正確に言えば学んではいません。ろくに学校には行かず、雀荘に入り浸るような日々。「できれば仕事したくないな、と思っていた」というところまで共通しています。

 無気力さで言うとむしろ柳井さんの方がひどかったかもしれません。卒業時に私は長年志望していた記者になるべく腰を上げましたが、柳井さんはなかなか上がりません。卒業後も職に就かず、ぶらぶら。5月に父親の勧めでやっとジャスコ(現イオン)に入社しますが、そこでも、やる気スイッチは入らず1年もたたずに辞めてしまいます。情熱が満ちあふれる今の柳井さんからは想像もできません。

 後輩記者がファストリの前身である小郡商事の店舗兼住宅跡地を写真に撮ってきました。寂れた商店街の小さな街角。「よくぞここから」とため息が出ます。柳井さんは「僕でもできたんだから、誰でもできる」と言います。

 今号の特集は「ファストリ」。しがない会社員と柳井さんの何が違うのか。私はもう見つけています。みなさんもそれぞれに見つかることがあると思います。

日経ビジネス2021年1月18日号 7ページより目次

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