「うちにはサクラ株という特殊な株式がありましてね……」
かつて製紙で業界4位だった大昭和製紙の幹部に相談されました。その特殊な株は多くの社員の名義になっているのに、会社が管理し創業家の意に沿うように議決権を行使するというのです。もちろん不正。後の2004年には西武鉄道で同じ手法の株の存在が発覚し堤王国の崩壊につながりました。
意のままに会社を操るため社員の名前を不正に利用する。そこから見えるのはオーナーと使用人の封建的な関係です。個人は食うために人生を会社に捧げる社畜となりがち。2社に限った話ではありません。西武が問題となった直後には上場350社以上が有価証券報告書を訂正する事態になりました。
日本企業が収益力を回復してからも、株主還元と経営トップの報酬の増加は目立つものの、社員の給与は横ばいが続きます。マクロで見ると封建的な構図は大して変わっていないようです。
ただ、ここに来て変化の兆しが見えます。人口減に加え、インターネットでの社会的情報共有やデジタル化による業務の一般化が封建的だった関係を対等に変えつつあります。副業はその現れ。はやりの「ジョブ型」もフラット化に向かう必然に見えます。
産業革命が農奴の解放に大きな意味をもたらしたように、情報革命が社畜の解放を促しているようです。後に振り返れば、私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。
今号の特集は「コロナ後の会社」。大きく変わりつつある個人と組織の関係を考えます。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「編集長の視点」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?