知人に「編集長の予測は当たりましたね」と言われ恐縮してしまいました。2020年の年初の原稿で「明日の見えない時代に突入する」と書いていたのです。経営者にとって先行きの見える期間が極端に短くなりそうだと指摘しただけで、疫病で世界がパニックに陥ると予見したわけではありません。

 しかし、このパンデミックを予測していた人もいます。11月23日号の編集長インタビューに登場したジャック・アタリさん。数年前から著書を通じて警鐘を鳴らしていました。なぜ予測できたのか。本当のところは分かりませんが、養老孟司さんのインタビュー中にアッと思うことがありました。

 養老さんはウイルスの発生源とされる中国の研究所の設立には「フランスの技術支援があった」と言ったのです。アタリさんはミッテラン政権以降、仏政府のブレーンを務め、マクロン大統領を見いだした人。予測につながる「情報」はキャッチできたはずです。

 もう一人、秀逸な予測をしたのはくら寿司社長の田中邦彦さん。3月末に、この緊急事態はチャンスだと見切っていました。売上高が前年比で1割以上も減っていた時にです。くら寿司は今、閉店ラッシュの都心の好立地に攻め込み、同3割の増収を記録しています。

 予測は「全く不可能」というわけではありません。そこに「情報」と「意志」があれば。

 今号の特集はズバリ「予測」。日経ビジネスは2021年も見えない明日に向かう足元を照らす「情報」を提供していきたいと思っています。皆様の意志をサポートできますように。

日経ビジネス2020年12月28日・2021年1月4日号 7ページより目次

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