1カ月ほど前の話ですが、残念に思うことがありました。ソフトバンクグループの孫正義会長が決算会見で「ここから先はAI革命への投資会社になる。これ1本だ」と言い切ったことです。

 かねて同社は単なる投資会社ではないか、と指摘されてきましたが、かつての孫さんはそれを否定していました。「投資信託と事業会社の中間にある新しい企業体だ」と反論している頃もありました。事業会社へのリスペクトがあったのだと思います。

 それが吹っ切れた契機は10兆円ファンドでしょう。資金力を高める強力なテコになりました。一方でサウジ王室などに約束した高利回り確保のため、テコに振り回されているようにも見えます。むしろ投資会社にならざるを得ないかのようです。英アーム売却などで事業への関与は薄れ、当初のユニコーン投資だけでなく米アマゾン・ドット・コムなど影響力行使が難しいビッグテックへの投資も始めました。

 以前、この欄で書きましたが、十数年前に「孫さんはNTTの回線を安く借りて、さやを抜いているだけではないか」と指摘し、激怒されたことがあります。革命の担い手になるという理想を掲げていても、やることは以前と変わらないように見えます。もちろん投資会社が悪いわけではありません。しかし、経済の主役はゼロから何かを生み出す主体である事業会社でしょう。孫さんには主役を演じてほしかった。

 さて、今号の特集は「日立と東芝」。なぜ両社に差がついたのか。「主役」たちの挫折とこれからを分析します。

日経ビジネス2020年12月14日号 7ページより目次

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