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 やっぱり中国は恐ろしい──。「アリペイ」を運営する中国アント・グループの上海・香港市場への上場が予定日の2日前に突然延期になりました。調達額は3兆6000億円と史上最大になるはずでしたが、あっけなくキャンセルとなりました。

 アントを持つアリババ集団は延期理由を「当局の監督方針の変更」としています。周囲では、経営権を握るジャック・マー氏が政府に批判的な発言をした結果だとの指摘もあります。しかし、本当のところはよく分かりません。

 分かるのは、10億人分ともいわれる決済データを握る企業を管理下に置くという中国政府の強い意思です。そこに自由はありません。

 一方、米国。司法省は反トラスト法違反の疑いでグーグルを提訴しました。グーグルやアップルなどGAFAは米国が中国とぶつかるデータ争奪戦の有力な武器です。彼らの力を削ぐことは中国を利することになります。

 それでも彼らをけん制するのは、国の言うことを聞かなくなる恐れがあると見ているからでしょう。「市場の要請」や「個人情報の保護」という盾を巧みに使い、自らの帝国を築く。それどころか巨額のロビー活動費で国の意思自体を変える構えを見せています。前回の大統領選で見せたように世論操作の力さえ握りつつあります。

 統制と自由の両極にいるように見えても、それは相似を成しつつあるように感じます。似ているのは中国共産党と米ビッグテックです。今号の特集は「GAFA」。コロナ禍で彼らの力は不気味に増しています。

日経ビジネス2020年11月16日号 7ページより目次