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 徹底抗戦か談合か──。

 ある業界で国内最大手企業の経営幹部の自宅前。夜の宴席から帰ってきた幹部と立ち話をしていました。話題は業界2位のA社について。4位メーカーと統合し、新たな最大手になると発表しました。そのA社に対する戦略を質問していたのです。大手2社のシェアが高まり「談合」しやすい状況になる一方、これから始まる統合作業でA社が混乱するうちに値下げ攻勢によって揺さぶりをかける手もあります。

 ちょうどその時、幹部の携帯電話に着信が。のぞき見ると、A社のトップの名前が表示されています。私に背を向け話し始めた幹部の携帯から、かすかに声が漏れてきます。「体制が整うまでは無茶をしないで下さいよ」。値下げ攻勢をしないよう要請していました。

 「談合はいけませんね」と電話を切った幹部に言うと、「うちはこれまで通りやるだけです」と電話での反応を繰り返しました。確かにその後も目で見て分かるような、異常な動きは確認できませんでした。ウオッチしていたはずの公取委も動きません。ただ、価格をつり上げるのではなく、動かさない談合など、やりようはいくらでもあります。生き死にをかけた企業はあらゆる手段を駆使するものです。

 今号の特集は「半導体」。あらゆる産業の頭脳を握る争いは米中のマッチレースになってきそうです。かつて日本を押さえ込んだ米国が中国を止めるか、「談合」を誘うのか、それを中国が蹴るのか。ユーザーでもある日本はよく見ておかないといけません。それぞれに生死がかかっています。

日経ビジネス2020年11月2日号 7ページより目次