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 ヨーロッパ人でアメリカ大陸を発見したのは1492年のコロンブスだと教わりましたが、これは事実ではないそうです。アメリゴ・ヴェスプッチでもありません。コロンブスの500年も前にアメリカ大陸北部に上陸し移住していた別の人たちがいて、遺跡も確認されています。その人たちは北欧のノース人。いわゆるヴァイキングです。

 入植の地を求め欧州中をさまよったヴァイキング。地図を眺めると、イベリア半島から西へアメリカ大陸に進むと数千km。しかも海流が逆になりますが、北欧のスカンディナビア半島から西に向かうと数百kmごとに島があり、海流もフォローとなっています。「新大陸」行きははるかに容易だったことが分かります。ノース人の伝説にも新大陸は現れます。

 では、なぜヴァイキングの新大陸発見があまり知られていないのでしょう。理由の一つに「誰が歴史を作るのか」という問題があるように思います。世界史の教科書は主にギリシャ、ローマなど地中海勢力や、スペイン、英国といった世界の覇権を握る権力を中心に描かれます。新大陸を支配することもなかったヴァイキングの伝説は「勝者の歴史」とは無縁だったのでしょう。

 今号の特集は「米大統領選」。勝者は歴史を刻む人となります。都合の悪い事実を「フェイク」と叫ぶ卑劣な行為を平然とやってのけ、それを無批判に拡散するSNS。こんな時代だからこそ、事実に真摯に向き合う必要があります。後世に役立つのは、勝者の書く歴史ではなく、真実の歴史のはずです。

日経ビジネス2020年10月19日号 7ページより目次