新政権の大事な任務の一つは日本のデジタル化。デジタル庁には電子行政だけでなく、産業を支えるデジタルインフラをどう構築するか、司令塔の役割を期待したいところですが、森政権のe-Japan構想から20年。「掛け声ばかりで何も変わらない」との冷めた見方もあります。
最近はあまり聞かれなくなりましたが、これまで日本を支えてきた「産業のコメ」と言えば「鉄」。ドイツを統一したビスマルクは「鉄は国家なり」と重要視し、日本も官民挙げて鉄鋼業の育成に努めていました。
日清戦争の賠償金で官営八幡製鉄所を設けたのはご存じの通り。傾斜生産方式も鉄鋼を強くするためでした。戦後間もなく、川崎製鉄が千葉に一貫製鉄所を新設しようとした時には日銀までもが投資の是非を検討しています。
興味深いのは1968年に業界1位と2位の八幡製鉄と富士製鉄が合併を発表した際。下位メーカーは当然反対したと思いきや、「結構なことだ」とみな歓迎しています。過当競争を避けて業界を発展させることを優先したからだと思われますが、世界と戦う日本全体を考える大きな視点が当時の経営者にはあったように感じます。
今号の特集は「デジタル」。コロナ禍で日本の遅れは明確になりました。冷めた見方をしている場合ではありません。鉄鋼を世界一に育てたように、日本全体を考え官民が協力すべき時です。もちろん、政治家の皆さんにも資金の流れの見える化を嫌がらず、マイナンバーの普及に本腰を入れていただく必要は最低限あります。
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