首相に就任して初の登院の際には与党からの歓迎の声も少なかったといいます。第1次世界大戦のガリポリ作戦で何万人という兵を失い、首相就任直前に指揮したノルウェー作戦にも失敗したウィンストン・チャーチル英元首相の評価は、当初はそれほどに微妙だったようです。

 英国を救ったヒーローとなるきっかけは就任後数カ月で始まったドイツ軍との空中戦「バトル・オブ・ブリテン」です。オランダ、ベルギー、ノルウェー、フランスを次々に降伏させたヒトラーへの恐怖心から和平論が閣内からも起こる中、チャーチルは本国上空で敵を迎え撃つことを決断しました。

 1940年のちょうど今ごろ。9月上旬の空中戦に英国の存亡がかかります。そして、辛うじてドイツ軍を撃退、英国制圧を断念させることに成功します。

 もちろんチャーチルの決断とリーダーシップは歴史的な功績です。ただ、決戦の要となったレーダー網の開発・配備、戦闘機の生産体制整備、戦略立案・実戦、国民の戦意維持など、名もなき個人の決死の奮闘なくして英国は救えませんでした。45年のドイツ降伏の日、歓喜で街にあふれ返った民衆にチャーチルは「これはあなたたちの勝利だ」と声を張り上げました。

 安倍晋三首相が退任します。アベノミクスのおかげで一時の底を脱した日本ですが、国際競争力は上がらず展望もないまま再び疫病でどん底に突き落とされます。特集は「再興ニッポン」。どう日本を再興するか。リーダーだけの責任ではありません。国を守るのは私たち一人ひとりです。

日経ビジネス2020年9月7日号 7ページより目次
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