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 命を断たれる場面はそれが人でなくても目を背けたい気持ちになります。

 2015年9月28日。海運国内5位だった第一中央汽船が◯◯銀行によって息の根を止められました。第一中央汽船がその銀行に持つ口座を一方的に凍結され運転資金を引き出せなくなったのです。第一中央汽船は翌日、民事再生法の適用申請を余儀なくされました。

 経営状態が思わしくなかったのは間違いありませんが、◯◯銀行がとどめを刺したのは疑いありません。後輩記者から口座凍結の報告を受けた時には、名だたる銀行がそんなひどいことをするものかと一瞬疑いましたが、銀行名を聞いて納得しました。

 その3年前の2月24日金曜日。半導体大手のエルピーダメモリが4つの取引銀行から約250億円の預金を全て引き出しました。そして週明けの月曜日。銀行に内緒で会社更生法の適用申請のために地裁に飛び込みました。預金を引き出す前に更生法申請を察知されると口座を凍結され、借金と相殺されてしまいます。運転資金を確保するため、銀行の意表を突いたのです。

 第一中央汽船の息の根を止めた◯◯銀行はその時の4行のうちの一つ。エルピーダの教訓を忘れてはいませんでした。口座凍結によって、少しでも債権を回収するために、第一中央汽船にとどめを刺してしまったのです。

 今号の特集は「廃業」。銀行もボランティアで事業をしているわけではありません。「コロナ恐慌」で貸出先の息の根を止める動きも出てくるでしょう。それぞれの銀行の振る舞いを目を背けずに見ておきましょう。

日経ビジネス2020年8月31日号 7ページより目次