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 「どうせ何年かすれば『役に立たなかった』となるのでは」

 話題のジョブ型人事制度を日経ビジネスで取り上げると、こんなご意見をいただくことがあります。確かに、コンサルに勧められて導入しても期待した効果を得られない企業が多いことでしょう。ジョブ型はここ30年ほど続く日本型雇用見直しの文脈の中にあります。より理想に近い働き方のために必要になった制度で、制度を入れたから理想に近づくわけではありません。

 仏作って魂入れず、と言います。優秀な他社と同じ形をまねてみても、理念が伴わなければ機能しません。人事や組織にからむ制度は人の心にかかわるため、その形よりも運用の仕方が重要になります。そもそも、上司の意見を下に伝えるだけの管理職や会議のための会議を主催することが仕事になっている社員を放置したままでは、ジョブ型が機能するわけはありません。

 今号の特集は「ノルマ」。新型コロナウイルスの影響で、営業に大きな打撃を受けている企業が多いと思われます。これまで設定していたノルマは意味のないものになっているかもしれません。しかし、もともと意味のあるノルマだったのでしょうか。上司が納得するように目標のグラフの傾きを変えて作っただけのノルマならば、「意味」があったのかはあやしいものです。

 ノルマは本来、組織の力を引き出すために設定するもの。人事制度と同じように、設定の基になる理念や運用が重要です。その仏に魂が入っているのかどうか、足元の非常事態が試しています。

日経ビジネス2020年8月10日号 7ページより目次