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 第2次世界大戦が終わってから間もなく75年になろうとしています。この間、世界に最も影響を与えた人は誰でしょうか。いろんな方が候補に挙がるでしょう。世界史的な視点で見ると、最有力候補に挙がるのは1970年代後半から90年代にかけて中国の最高指導者だった鄧小平氏ではないでしょうか。

 列強に蹂躙(じゅうりん)され、戦後も先進各国との差が開くばかりだった中国の改革開放をけん引。資本主義経済を取り入れる一方で、共産党による独裁体制を崩さず、現在につながる「国家資本主義」を形づくった人です。戦前から世界の覇権を握り続けた米国を脅かし、経済規模で逆転が確実視されるまでに中国を変革できた影響は世界的にも甚大で、革命的な出来事です。

 卓越した政治力、構想力だけでなく、「白猫黒猫論」に象徴される現実主義が特異なところですが、その背景にある謙虚さが目を引きます。

 78年の3中全会で実権を完全に掌握する2カ月前には雨の中、大阪にあるパナソニックのテレビ工場を訪問し「経営の神様。中国の近代化を手伝っていただけませんか」と松下幸之助さんに懇願。人民日報によると訪日時の記者会見では以下のように述べています。

 「まず必要なのは、我々が遅れていることを認めることだ。素直に認めれば、希望が生まれる。次に、学ぶことがうまくなければならない。日本を訪れたのも教えをこうためだ」

 中国は科学技術や企業経営で世界をリードする立場になりました。今度は日本が学ぶ番です。飛躍のために。

日経ビジネス2020年8月3日号 7ページより目次