全601文字

 この欄でたびたび書いていますが、世界が時代の転換期を迎えていることはもはや疑いようがなくなっているように思います。経済や国際関係における変化が新型コロナウイルスによって増幅・加速されているさまを私たちは見せつけられています。今号の特集テーマである「資本主義」はどうでしょう。

 企業家によるイノベーションが経済を発展させると説き、そのさまを「創造的破壊」と呼んだ経済学者のシュンペーターは著書「資本主義・社会主義・民主主義」の中で以下のような、少し意外な見解を述べています。

 「資本主義は生き延びることができるか。否、できるとは思わない」

 経済的失敗から資本主義が瓦解すると説いたマルクスとは逆に、「資本主義の非常な成功こそが、不可避的にその存続を不可能ならしめる」と言い切っています。

 今、資本主義の高速回転はますますそのスピードを上げ、遠心分離の作用が貧富の格差や地域・民族の分断を広げているように見えます。非常な成功ゆえの自壊の要因はあるように見えます。

 では、自壊の後はどうなるのか。この著書のベースになった講演録を読むとシュンペーターは、マルクス的な調整を経ながら「徐々に死滅する」と語っています。ただ、講演の中では何度も「予言はできない」と強調しています。そして聴衆に「私の考えに同意するかどうかは重要ではない」と呼びかけます。重要なのは、問題を直視し、再建に寄与すること。考えることだと。

日経ビジネス2020年7月13日号 7ページより目次