全639文字

 トヨタ自動車とスズキの提携が深化しています。インドでトヨタがスズキ製ハッチバックを販売したのに続き欧州でトヨタ製SUVをスズキが販売します。この提携の伏線は過去にスズキが直面した2度の経営危機にあります。

 1950年には大規模な労働争議でキャッシュが回らず、75年には排ガス基準を満たすエンジンを開発できず、窮地に。しかし、それぞれトヨタによる資金支援とエンジン供給で難を逃れました。75年にスズキ専務だった鈴木修さんは「倒産」の文字が頭を駆け巡ったと言います。今回の提携でトヨタはスズキが最大シェアを握る将来の有望市場、インドを攻略する糸口をつかむかもしれませんが、救済の際にはそんな損得勘定はなかったことでしょう。

 米英型の株主資本主義の考え方が強まったことに伴い、経済合理性を超えた経営判断は難しくなってきました。スズキを救済した当時にトヨタのトップを務めた石田退三さんや豊田英二さんのようなソロバン抜きの決断は容易ではないかもしれません。

 ただ、企業が自らの健全性・経済合理性に気を配ってさえいればよい時代も転機を迎えています。withコロナの常態化、異常気象を呼ぶ地球温暖化などで、企業がよって立つ社会自体の安定が確かなものではなくなってきています。企業が健全性を守るためには自らのことだけでなく、社会の安定に能動的に関わる必要がありそうです。

 今号の特集はコロナ禍における企業と社会。「情けは人のためならず」とも言います。利他的な経営に向き合う時代かもしれません。

日経ビジネス2020年7月6日号 7ページより目次