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 日産自動車が2020年3月期決算で6000億円を超える巨額の最終赤字となりました。まるでデジャビュを見せられているようです。

 世界シェア10%を目指す「グローバル・テン」を掲げ、海外市場の攻略にアクセルを踏んだ日産は身の丈を超えた販売網の拡大、車種の増大によるコスト負担に耐えきれなくなり、巨額赤字を計上する──。まさに今、日産に起こっていることと同じ構図ですが、「グローバル・テン」は1990年を目標年度としたかつての計画です。この拡大戦略に失敗し、99年にルノーに助けを求めたのです。

 当時、旗を振ったのは経営トップにいた石原俊氏。「塩路天皇」とまでいわれ経営にも大きな力を持った労働組合のボス、塩路一郎氏と対立し、実権を奪うと今度は「石原天皇」として日産に君臨します。すでに経営が傾いていた98年には「相談役」からの退任を求められますが、本人が「最高顧問」の肩書を要求し、経営陣が拒否できなかったという逸話があります。

 99年からはフランスから来たカリスマが新たに君臨したのはご存じの通り。そして、同じ歴史をたどるのです。今、日産では「ゴーンの独裁が悪かった」という声が聞かれます。しかし、長年の相次ぐ独裁を許し続けた社員にも共犯の罪があるのは明らかです。

 石原氏は権力闘争の最中に「1人がこうと言えば皆が賛成するという時代じゃない。いろんな意見が出て審議を尽くす方がいい」と理想を語りましたが、実現しませんでした。今度こそ悪い歴史を断ち切る時です。

日経ビジネス2020年6月29日号 7ページより目次