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 新型コロナウイルスは世界を変えます。中国もコロナで明確に一皮むけそうです。自由を求める人たちには好ましくない方向で。

 コロナの感染が深刻化した中国は、スマホ画面に持ち主の感染危険度をQRコードで表示する仕組みを導入しました。緑色のQRコードなら健康、赤は感染者、黄色は感染者との濃厚接触者などを示し、交通機関や商業施設への出入りには欠かせなくなっています。

 人の移動情報や健康情報、恐らく信用情報などまでを統合した「監視システム」。政府からの情報で映し出すため、病気が治ったと思っても本人の意思で表示を変えることはできません。

 人を殺害し24年間逃走していた男が5月に入り中国の警察に出頭しました。QRコードを提示できず宿泊も買い物もできなくなってきたためです。QRコードの表示は政府の意思次第。危険思想の持ち主は色を変えることもたやすいでしょう。本人が「それは何かの間違いだ」と主張したとしても。

 独裁国家は必ずいつか崩壊するという歴史の常識をテクノロジーが覆す可能性がある、と3年ほど前にもこの欄で書きましたが、中国はいよいよそれに近づきつつあります。都市封鎖は解除されましたが、自由を封鎖する動きはむしろこれからかもしれません。

 権力は時に間違いを犯します。そして、声の大きなものに動かされがちです。力なきサイレント・マジョリティーはのみ込まれ健全な批判精神がむしばまれていく。注意しなくてはいけないのは、これは民主主義国家でも起き得ることだということです。

日経ビジネス2020年5月25日号 7ページより目次