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 就活生やその親御さんたちは、さぞ気をもんでいらっしゃるでしょう。新型コロナウイルスによる企業への打撃は避けられず、採用説明会も相次ぎ中止されています。にわかに就職氷河期のつらい記憶がよみがえります。2018年の労働力調査では氷河期世代で正規雇用してもらえない非正規雇用者はなお50万人、家事も通学もしていない非就業者が40万人。合計90万人は氷河期を脱していないまま取り残されています。

 3月頭からニュージーランドに留学中のAくんにも氷河期が迫っています。10月入社の約束で日本企業から内定をもらっているのですが、先行きが見通せません。主要航空は4月から3カ月間の運航休止を決定、万一、運航休止期間がさらに3カ月延長となれば帰国も入社日に間に合いません。

 Aくんは3月にとんぼ返りする選択肢もありましたが残留しました。2人きりの年老いたホームステイ先夫婦に寄り添ってあげ、欧州やアジアから集まった新たな友人たちとオンラインとはいえディスカッションする異国での日々が自らを成長させると判断したのです。それが目先の就職よりも大切ではないかと。果たして結果はどうなるか。

 今号の特集は「雇用」。疫病は罹患(りかん)者だけでなく、あらゆる人の人生を変えてしまう勢いです。氷河期は就活生やAくんだけでなく多くの労働者の人生に迫るかもしれません。ここのところ「社会的責任」と唱えていた企業はどう振る舞うでしょう。「SDGs」は「誰一人取り残さないと誓う」としています。今度こそ若者を取り残すことだけは避けたいところです。

日経ビジネス2020年4月27日号 7ページより目次