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 「修さん怒ってませんでしたよ。むしろご機嫌で」。自動車担当の記者が報告してくれました。

 1月13日号の「編集長インタビュー」でスズキ会長の鈴木修さんに登場いただきました。40年以上前から経営の指揮をとる修さん。記事の終わりに私はせんえつながら「息子の俊宏さんが強引にでも修さんから実権を奪取すべき」と書きました。もし修さんが権力にしがみついているなら怒ったかもしれません。しかし、反応は逆。本当はスズキを安心して任せたいという切なる思いが強いのではないでしょうか。

 創業者あるいは修さんのような第2の創業者からの後継者へのバトンタッチは難航しがちです。日本電産の永守さん、ユニクロの柳井さんといった日本を代表する創業者も直面している課題です。後継候補の能力自体に問題があるようには見えません。大事な会社を永続させるため早く世代交代したいという気持ちも皆さんお持ちです。それでも進まない。

 「死んでも会社を守る」「何が何でも事業を伸ばす」。修さんらは文字通り全身全霊、自らの全てを注ぎ込んで会社を育ててきました。一歩間違えば一家で首をくくる修羅場と背中合わせの燃えるような熱い「創業者精神」。それが後継候補から十分に伝わってこないというのがバトンを渡しきれない理由ではないかと私はにらんでいます。

 今号の特集は「リーダー育成」。新型コロナウイルスによる打撃が企業を襲っています。この修羅場は企業のいたるところで創業者精神を育む機会となりえます。

日経ビジネス2020年3月9日号 9ページより目次