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 トヨタ自動車が街をつくるという話はご存じの方も多いと思います。何をしようとしているのか。詳しくは今号の自動車特集で紹介しますが、新技術の開発・実験が猛スピードで進む米国や中国に対抗し、規制などにとらわれない挑戦を実現する場となるようです。

 「トヨタほど危機感の強い会社はありませんよ」

 トヨタの幹部の方がこうおっしゃったことがあります。実験のために街をつくってしまうくらいなので、確かに危機感は強いでしょう。ただ、少し誤解があります。強烈な危機感を抱く会社はトヨタだけではありません。

 「みなさん危機感をお持ちですよ」と長くリストラに苦しんだ電機業界の話をして差し上げると「そこまで大変だったのですか」と唸っていました。常に注目を集めるトヨタは自社のメディア露出だけでも膨大で読むのが大変でしょう。他業界について詳しく知らないのも無理はありません。しかし、それではもったいない。

 電機業界には日立製作所やソニー、シャープなど死の淵をのぞき込むような経験をした企業がいくつもあり、今ももがいているところも多くあります。製品がコモディティー化していく苦しみを味わったのです。クルマというハードも同じ道をたどるでしょう。先達の苦労に学ばない手はありません。

 激変の時代です。社内よりも社外に広く学びの目を向け、謙虚に耳を傾ける。こんな時代の基本姿勢です。当たり前のことですが、大きな会社ほど難しい。トヨタはきっと大丈夫でしょうが……。

日経ビジネス2020年2月24日号 7ページより目次