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 「I love this company」

 2008年。日常の業務から手を引くと決めた米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏はお別れ会でこう語り、涙を流しました。13年、2代目CEO(最高経営責任者)の座を降りると表明したスティーブ・バルマー氏も従業員集会で涙を流し、やはり「この会社を愛している」と言いました。

 一時はたそがれていたマイクロソフトが復活しています。時価総額はここ5年で約4倍になり、GAFAをも上回る躍進を見せました。けん引しているのは3代目のサティア・ナデラCEOによる「ウィンドウズ帝国の破壊」。今号の編集長インタビューに詳しくありますが、基本ソフトのウィンドウズでもうけるこれまでのビジネスモデルを根本から転換し、新しい会社となりました。

 我が子のように育てたウィンドウズの更新が無償化されるなど、これまで血道を上げた方針を大転換することに対し、ゲイツ、バルマーの両氏には複雑な思いがあったはずです。しかし、改革をナデラに委ねました。2人のマイクロソフト愛がノスタルジーを断ち切ったことで復活劇は実現したのです。

 特集は「企業と国家の未来」。急速に進む技術革新と大きく揺れる国際情勢の影響で、世界のあらゆる秩序が変動する時代を迎えています。先を見通せない「明日が見えない時代」の始まりです。変化を察知し、迅速に対応するマネジメント力や技術力がより重要になります。何よりそれらを引き出す事業への愛情や情熱こそが見えない時代を生き抜くために欠かせない要素になりそうです。

日経ビジネス2020年1月6日号 7ページより目次