「信頼を著しく損なう事態となり大変申し訳なく思っている」

 かつて、反社会的勢力である総会屋に利益供与したとして有名大企業の総会屋担当の管理職が相次ぎ逮捕されたことがありました。日立製作所、東芝、キリンビールをはじめとする三菱グループ各社等々。そのうちの1社の社長は記者会見で冒頭のように陳謝し「役員は誰も知らなかった」と上層部の関与を明確に否定しました。総会屋担当の3人しか認識していないと。

 しかし、取材をしていると首をかしげる社外秘のエピソードにぶつかりました。総会屋担当だったAさんは警察に出頭する直前に本社の役員フロアに立ち寄っていました。そこで幹部らに囲まれ社長と握手。「行って参ります」と挨拶し、女性秘書たちが涙ぐんでいたというのです。役員がどれだけ関与したのかは不明ですが、会社の問題を管理職に押し付けた責任を社長は感じていたのでしょう。有罪判決を受けたAさんですが、調べてみると後にグループ会社の役員に栄転されています。

 同じように何人もの管理職が有罪判決を受けました。総会屋に命を狙われるような時代に会社を守るため身を挺(てい)した人たち。ある管理職は「とんでもない部署に来た」と配属に驚いたと言います。好んで着任したわけではありません。すべては巡り合わせです。

 今号の特集は「謝罪」。今年も多くの謝罪会見がありました。悪いことをした本人もいれば、巡り合わせで会見の壇上に立たされた人もいるでしょう。組織を守るために──。会社とは何かとまた考えてしまいます。

日経ビジネス2019年12月16日号 7ページより目次

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