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 アジア最強の製造業はどの会社でしょう。トヨタ自動車を思い浮かべるかもしれませんが、収益力で見ればトヨタを圧倒する韓国のサムスン電子が現時点では最強でしょう。純利益は4兆円。あっという間に日本企業を抜き去った印象ですが、危機もありました。

 世界屈指の高収益企業に育てたのは1987年にグループ会長になった李健熙(イ・ゴンヒ)さん。就任の翌年に「第2の創業」を宣言し、グループ内に変革を指示します。韓国最大の財閥に登り詰めていたサムスンですが、李健熙さんは自信過剰で挑戦意欲のない「サムスン病」にむしばまれている危機を感じとったのです。

 しかし、社員の心は簡単には変わりません。「会長に就任したものの、未来は真っ暗だった。第2の創業を宣言したが、何年たっても変わったという気がしなかった」と当時の心境を明かしています。このままではグループが消滅してしまうのではないかという危機感にとりつかれ、不眠症となり体重も10kg以上減ったほどでした。

 そして93年に社員を「説得」するための世界行脚に乗り出します。「妻と子以外はすべて変えろ」という言葉はこの時のもの。普段は物静かな李健熙さんから度々発せられる怒声でようやくサムスンは世界一流への階段を上がり始めたのです。

 特集は「サムスン」。当面、高収益は続くでしょう。しかし、異変が見えてきました。現在の実質的なトップである李在鎔(イ・ジェヨン)さんは父親譲りの勉強熱心な方。きっと危機を察しているはずです。

日経ビジネス2019年11月11日号 11ページより目次