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 日本と南米ボリビアには共通点があります。ともに「資源国」として16〜17世紀、世界に大量の銀を供給しました。ボリビアのポトシ銀山は世界一とうたわれ、石見銀山はそれに匹敵するともいわれました。日本は世界供給量の3分の1を賄ったとされます。

 世界を席巻したのは埋蔵量のためだけではありません。ポトシは水銀を使って銀を抽出するアマルガム法を導入、石見でも鉛を使う灰吹法が採用され、飛躍的に産出効率が上がり、これにより銀が世界に流れ込んだのです。

 ポトシ銀を使ったスペイン銀貨は欧州中にあふれ、「価格革命」を誘発して階級秩序を揺るがす一方、大航海の時代に乗って東アジアにも流れてきます。そこでの主役はむしろ石見銀。香辛料や繊維を交換するために欧州列強が奪い合います。欧州とアジアの交易は銀を媒介として一気に花開きました。大航海時代に始まる世界経済の一体化を促したのは、技術革新によってもたらされた大量の銀だったわけです。

 その後、世界は金本位制に移りますが、さらに秩序が変わり、金や銀にひも付かない紙切れが通貨になっている現代。大航海時代の人々が見たら、目を丸くするに違いありません。デジタル通貨「リブラ」は理解できるでしょうか。

 今号の特集は「通貨」。そのあり方は社会のあり方を大きく動かします。これからどうなっていくのでしょう。歴史から見て確実なのは、今の通貨制度は永続しないということです。気がつけば、新しい通貨による新しい社会がもたらされているはずです。もちろん技術革新によって。

日経ビジネス2019年9月30日号 9ページより目次