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 「ファーウェイのスマホが安全かどうかだって? それは何とも言えない、としか言いようがない」

 ある大企業の幹部で、通信の専門家でもある知人は苦笑していました。ファーウェイのスマホを分析したところ「明らかに謎の部分がある」。しかし、その謎の部分が何か悪さをするものなのかどうか、「クロ」か「シロ」かが分からないというのです。「調べるには技術者が1000人はかかる」と知人は肩をすくめます。別の企業も同じ理由で解明を断念したと聞きました。

 今号の特集は通信技術で世界の最先端を走る「ファーウェイ」。仮にファーウェイが機器を販売した各国の通信を傍受できるとするならば、中国国内の通信も手に取るように分かるはず。知ってはいけない情報も多いでしょう。中国政府はファーウェイをどう扱っていくのでしょうか。ライバルなきファーウェイの今後は、もはやその一点にかかっているように思います。

 今号にも登場する同社の輪番会長、郭平さんは穏やかで笑顔を絶やさない方です。しかし、昨年お会いした時にはとても怖い顔を見ました。

 中国政府のあり方について聞いた時です。笑顔は消え、スイッチが切れたかのように、完全な無表情になりました。怒りや苦笑といった喜怒哀楽が全くなく、こちらに向いた瞳は力が入っているわけではなく抜けてもなく、ただ全く動かない漆黒があるだけ。これだけ感情を読み取らせないようにする表情は見たことがありません。中国という国の怖さ、ファーウェイの苦しみが一瞬で伝わってきました。

日経ビジネス2019年9月9日号 7ページより目次