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 「落ちてしもた。しゃあないわ」

 大学受験に失敗した同級生が力なく笑っていた顔が忘れられません。親からは授業料の安い国公立しか行かせられないし、浪人させられる余裕はないと言われていました。その国公立に落ちてしまいました。地元の運送会社に入り、とりあえずトラックの運転手になると言っていました。それはそれでいい仕事だと話しましたが、バイオ関係の勉強がしたいという希望とは随分と違う道を歩むことになりました。家庭の事情が違えば、もしかすると希望はかなっていたかもしれません。

 同級生の受験失敗は30年以上前の話ですが、今も同じ境遇の子供たちは少なくないのではないでしょうか。日本学生支援機構が3月にまとめたリポートでは、2017年に同機構の奨学金を利用する学生は高等教育機関で学ぶ全学生の2.7人に1人となりました。10年前の3.4人に1人からむしろ比率が増えています。背景には親の平均給与の伸び悩みがあると分析しています。

 小学生の子を持つ知人が進学塾に2カ月で30万円かかったと目を丸くしていました。有名中学に塾なしで入るのは至難の業。いくら高校授業料が免除になっても、学歴とそれにつながる就職には家計の事情が強く影響します。

 今号の特集は「学歴格差」。人手不足が叫ばれる昨今、私たちは本当に人材を生かしきっているでしょうか。女性には出世を妨げるガラスの天井があると言われますが、学歴格差では同じ競争の中にさえ入れない「壁」がなお存在します。ダイバーシティは性差の問題だけではないはずですが。

(東 昌樹)

日経ビジネス2019年8月12日号 7ページより目次