全631文字

 「企業が手掛ける事業はすべて誕生、成長、成熟、衰退のサイクルを持つんですよ」──。20年ほど前に会った米デュポン社長のチャールズ・ホリデーさんはこう断言していました。よく語られることではあります。が、1802年創業の歴史を持ち、素材企業でありながら「ナイロン」や「テフロン」など世界的に有名な定番商品を生み出した企業はやることが違います。

 ホリデーさんがそのころに打ち出した戦略は「世紀の大ジャンプ」。創業から100年は爆薬メーカー。そこから次の100年は石油化学事業に飛び移り成長を確保しました。そして3世紀目にあたる2000年代からは農業などバイオ科学の会社に生まれ変わろうとしていたのです。考え方の根底にあるのが、冒頭にあるすべての事業が逃れられないというサイクルです。

 会社を成長させるために事業を変える──。ホリデーさんは利益の約2割を稼ぎ出していた石油エネルギー事業を売却、ジャンプの資金にあてました。

 ところが、ここにきてデュポンはジャンプの仕方までを変えたようです。同じ化学の巨人、ダウ・ケミカルと合併、すぐさま今年、合併会社を3分割しそれぞれ独立させたのです。世界最大化学会社の解体。事業のために会社を変える──。発想の大ジャンプです。これからは、それぞれの会社が成長するために事業を変え、事業を成長させるために会社を変え……という飛び方になるのでしょうか。

 今号の特集テーマは「定番」。まずは「ナイロン」「テフロン」を目指すヒントになれば。

日経ビジネス2019年7月22日号 7ページより目次