全643文字

 個性的な京都の電子部品メーカーの中でも独特な輝きを放っています。村田製作所。京セラのように内外で絶大な人気を誇るカリスマが精神的支柱になっているわけではなく、日本電産のように強烈なトップがぐいぐい引っ張るわけでもない。それでも収益力は他を圧倒しています。なぜでしょう。

 同社の歴史は創業者である村田昭さんの父が作った「村田製陶所」に始まります。仕事場のあった京都市東山区は清水焼のふるさととして小さな陶器工場が集まっていたそうです。なぜ村田が密集の中から抜け出せたのか。ここに強さの理由の一つがあります。

 細々と絶縁用碍子(がいし)を焼いて売っていた父に昭さんが得意先を広げようと進言した時のこと。温厚な父が激怒して猛反発。「注文をもらうには同業者の得意先を奪うことになる。同業者が困るし安くしないと注文はもらえない。まかりならん」。怒った表情が脳裏に焼き付いて離れなかったそうです。

 これを機に昭さんは後の電子部品につながる化学用陶磁器という同業者がまだいない製品の開発に没頭していきます。人が手掛けていない仕事を見つけ、マネできない商品を開発すれば揺るがない経営体質が確立できる。20年以上も前にお会いした昭さんは「『人のマネをするな』が信条」だとおっしゃっていました。

 ただ、マネできない商品の開発には気の遠くなるような時間がかかるそうです。「長い時間が結局は発展の近道」。会社の胆力、忍耐力が問われます。

 今号の特集は「村田製作所」。強さの理由はまだまだあります。

(東 昌樹)

日経ビジネス2019年6月3日号 11ページより目次