全633文字

 5月9日、10日とワシントンで米中の貿易交渉に臨んだ中国の劉鶴副首相。盗聴されていたと考えた方がいいかもしれません。たとえファーウェイ製のスマホを使っていたとしても。

 かつての日米自動車交渉の際には、通産省と日本メーカーとのやり取りが米中央情報局(CIA)に盗聴され、日本がどれだけ譲歩できるかを探られていました。ジュネーブのホテルでも盗聴されていたのですから、米本国ならさらに容易でしょう。

 1970年代から90年代。繊維、テレビ、半導体、自動車などの「戦略商品」が次々と米国のターゲットとなり、日本産業は競争の足かせをはめられました。米国の7割の規模にまで迫っていた日本のGDPは今や米国の3割以下になり、もはや国としてライバルとは言えない水準になりました。

 新しい競争相手の中国は米国にとって日本をはるかに上回る脅威。今世紀半ばには経済規模での逆転が確実視されています。内外に平和的とは言えない共産党支配の大国が世界トップとなる恐怖。貿易赤字どころでなく世界の覇権を争う摩擦とすれば、それはこれから先、何十年も続くことになるでしょう。世界のボスであり続けるための米国の終わりなき攻撃を覚悟しなければいけません。

 さて、今号の特集はAI。「AIバブル」はそろそろ終わると言われますが、今後の国の競争力を左右するのは間違いありません。AIのカギは利用するデータの質と量です。ともに中国が有利。近いうちに米国の攻撃が本格化することになるかもしれません。

(東 昌樹)

日経ビジネス2019年5月20日号 7ページより目次