もうすぐ平成が終わります。今号では平成を代表する名経営者は誰か、読者に選んでもらいました。ソフトバンクの孫正義さんのランクインは予想通り。ただ、同社がここまでくるのに欠かせなかった人物がほかにもいます。

 その代表を独断で選ぶとすると副社長の宮川潤一さん。通信に参入した20年近く前から技術・設備部門を統括しています。宮川さんがいなければ全く違う会社になっていたことでしょう。

 「風に流される柳のようになろうと考えていた」という宮川さん。大学(仏教学科)を出ると環境ブームに乗って価格が3万円の小さな焼却炉の製造ビジネスを始めます。その後、インターネットの勃興を受けてプロバイダーを開始し、大当たり。

 勢いに乗って始めたADSL事業でつまずき、ソフトバンク傘下に。これがのちにソフトバンクを通信大手に押し上げた「Yahoo! BB」のサービス母体となります。 ボーダフォンの買収を進言、米スプリントの再建など事業の節目にはいつも宮川さんがいます。

 今度はトヨタ自動車と設立したモネ・テクノロジーズの社長となり、日本のモビリティーに関わる情報プラットフォームづくりに乗り出します。3万円の焼却炉から日本の産業基盤へ。わらしべ長者のように案件はどんどんスケールアップしていきます。

 事業を語る宮川さんは実に楽しそうです。新しいイタズラを語る子供のよう。大企業が忘れている挑戦へのギラギラとした好奇心が見えます。世界に名を轟かせるソフトバンクの原動力はその辺りにありそうです。

日経ビジネス2019年4月29日・5月6日号 7ページより目次
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