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 鶏の卵をとった、とらないに始まる隣人同士の喧嘩話──というとコメディードラマのようですが、ロシアの文豪トルストイがこれを題材にした小説を書いています。『火を粗末にすると──消せなくなる』という短編です。

 卵から始まった争いはどんどんエスカレート。暴力が裁判となり鞭打ちの刑となった隣の主人は仕返しに主人公の納屋に火をつけます。主人公は怒りのあまり火を消すのを忘れて隣人を追いかけ……些細なきっかけの争いが燃えあがったように、小さな火は村の半分を焼く大火事となってしまいました。主人公は家財を失って初めて、その責任は相手の言動にいちいち腹を立てる自分にあると悟ります。

 トルストイは貧困に苦しむ農奴の地位向上をライフワークとし、専制政治に異議を唱え続けましたが、非暴力を貫き、悪に対する悪の報復を否定しました。クリミア戦争に従軍し、20万人規模の戦死者が出たセバストポリの戦いでの体験が背景にあるとされます。