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 「あの人が天ぷら屋のトイレで倒れたらしい。あの人さえ退けば合併しても大丈夫だ」

 2000年にDDI、KDD、日本移動通信の3社が合併した前後、KDDの社内ではこんなうわさ話が流れていました。あの人とは稲盛和夫さん。通信自由化を受けて創業したDDIを率い、合併交渉も主導していました。その稲盛さんがKDDの幹部との会食で倒れこんだというのです。大ごとにはならなかったものの、経営の一線を退く日は近いとKDD社内ではうわさされたのです。

 強力な営業で大手に駆け上がったDDIと国際通信の独占を許されていたKDDは「野武士」と「公家」といった対照的な社風。合併すればDDI側に駆逐されるという不安もありKDDは合併に慎重でした。冒頭のうわさが流れ、野武士の大将さえいなくなれば公家も生き残れると合併歓迎に傾くことになります。実際には、思惑は外れKDDIはDDI色に染まっていきました。