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 「カネが諸悪の根源だというのは、正しいようでいて正しくない。カネを扱う時には、人間の本性が露呈しがちだという、それだけの話だ。」

 日経ビジネスオンラインの連載コラム第1回に、小田嶋隆さんはこんなセリフをぶつけてくれた。

 2008年10月31日に始まった「ア・ピース・オブ・警句」の連載はすぐにこのウェブサイトの看板コラムとなり、日経ビジネス電子版にも引き継がれて、22年4月8日までの13年6カ月で631本の原稿を世に問うた。今お読みの日経ビジネスの「pie in the sky」でも、14年1月13日号から連載が始まり、8年と3カ月の間に221本の原稿を頂いた。

 自分は2つのコラムの立ち上げと編集、そして2冊の単行本の仕事に携わった。大変でしょう、とよく言われたが、小田嶋さんはどんなに自分に都合が悪いときでも、必ず電話に出てくれる方だった。なので、仕事はスリリングだが楽しかった。

 そんなご縁から、今回、追悼文を書くよう業務命令を受けた。

 とんでもないことだ。

 名コラムニストを愛する人はやはり名文家が多く、ネットを検索すれば「おお、小田嶋隆の文章の魅力とは、そういうことだったのか」と唸るしかない、見事なテキストがたくさん読める。そして私は自分のできることの限界を知っている。

 なので、個人的なことを書く。

 私は『我が心はICにあらず』(1989年、光文社文庫)を夜行列車で読み、「自分の笑い声を押し殺しきれない」体験をして以来の小田嶋さんファン。どこが好きって、言葉のバラエティー、使い方の巧みさ、話の飛ばし方、最後は盲点のど真ん中に着地してみせる切れ味。一例を引用しよう。

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