
20年ほど前、雑誌の取材で、とあるプロサッカーチームのコーチと話す機会があった。夏場の強行スケジュールの中、出場メンバーをどうやりくりするかといった月並みな話題だったのだが、コーチ氏が漏らした言葉が、今でも印象に残っている。
「あのね。試合を作るのは、芝の上の選手だけど、シーズンを作るのは試合に出てない選手なんですよ」
とコーチ氏は言ったものだった。
彼の言によれば、たしかに当面のゲームの勝敗を決するのはフィールドを走っている選手たちなのだが、1シーズンを通したチームの状態と、来季に向けた中長期的な戦略は、むしろベンチのメンバーや、ベンチ入りさえしていない練習場の若手の潜在能力と成長にかかっているのだという。つまり、3年後のチームはベンチと練習場の芝の上にすでに存在している。コーチの仕事は、目前の試合のみならず、近未来のチームの骨組みを作るところにある。だから面白いのだ、と。
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