(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 最近「親ガチャ」という言葉を、しきりと目にする。で、「君がガチャを回した結果として親を登場させたわけではなくて、むしろ親がガチャを回して君を出したと思うのだが、オレのガチャ解釈は間違っているのか?」と、ツイッターに書き込んだのだが、どうやら少し違っていた。「親ガチャ」という言葉を使う人たちが、「ガチャ」に込めている意味は「子は親を選ぶことができない」「どんな親の元に生まれてくるのかは運次第だ」という心持ちであるようだ。なんだ。当たり前じゃないか。

 こんな月並みな観察が人々の心をとらえている背景には、たぶん、自己責任万能思想が、この世界のあらゆる場所でハバをきかせている現実がある。個人が何を選び、どこに住んで、どんなものを食べ、いかなる健康状態で暮らしているのかも含めて、すべての結果は自己の責任に帰せられる。政府の施策に苦言を呈する国民に対しては「そんなにこの国がいやならさっさとほかの国に脱出しろよ」という声が四方八方から寄せられることになる。

 してみると、「親は選べない」「子は選べない」という一種の運命主義というのか諦観を含んだ「ガチャ」思想は、責任放棄的な救済をもたらす。「どうなろうがオレの責任じゃねえし」「別にオレの意思で選んだわけじゃないから」という、一種投げやりな態度の向こう側に、はじめてなけなしの自由が顔を出すわけだ。

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この記事はシリーズ「小田嶋隆の「pie in the sky」~ 絵に描いた餅べーション」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。