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(イラスト=小田嶋 隆)

 毎年とんでもない豪雨がやってくる。で、気象庁は「これまでに経験したことのないような大雨」を繰り返す。

 この言い回しを聞くたびに、私は「誰の経験だ?」と真正直に反応してしまうのだが、調べてみるとこの「経験」とは「府県程度の広がりの範囲内で、50年に1度の値を超過した5km格子の数が解析雨量48時間積算および土壌雨量指数において50以上になるか、解析雨量3時間積算および土壌雨量指数において10以上になった場合を指す」のだそうで、つまり、補っていえば、「当該の地域に住む人が、この50年ほどの間に1度も経験したことのないような大雨」ということになる。

 気象庁としては、過度に厳密な官僚的言明を避けつつ、主語を省略しても大略が通じる日本語の特性を生かして、簡明な表現を採用したのだろう。まあ、気持ちはわかる。しかし、ただでさえ詩的な感興を招きやすい気象関連の言葉を、主語を省いた形でアナウンスされると、ポエムに聞こえてしまうわけで、そこがニュース映像の緊迫した絵面(えづら)と似合わなくて困惑するわけですね。ええ、余談でした。

 ワイドショーを見ていると、時に、命に関わる大災害の画面を背景に、お気楽な余談をカマすコメンテーターが現れてびっくりさせられる。