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(イラスト=小田嶋 隆)

 悲しいニュースが伝えられてきた。アフガニスタン東部ジャララバードで、現地時間の12月4日、日本人医師でNGO(非政府組織)「ペシャワール会」現地代表の中村哲さん(73歳)が殺害されたというのだ。

 中村さんは、これまで、医師として医療援助を展開するかたわら、貧困層の生活改善のために灌漑事業を推進するなど、アフガニスタンの支援のために尽くしてきた人だ。同会によれば、中村さんの活動により福岡市の面積のほぼ半分に当たる、1万6500ヘクタールが潤い、65万人の生活が支えられているという。それだけに、今回の不慮の死には、同国のガニ大統領をはじめ、世界中の人々から哀悼のメッセージが寄せられている。

 個人的に印象深かったのは、いつもはシニカルに構えることの多いネット上の論客たちが、異口同音に中村医師の死を悼み、彼の業績を最大限の言葉でたたえていたことだった。

 つい先日の緒方貞子さんの時もそうだったが、世界の人々に尊敬される日本人がいたことを、私のような情報弱者は、その偉大な人物が亡くなった時になってはじめて、思い知らされる。もっと勉強しないといけない。

 ひとつ寂しく思うのは、国境を超えて尊敬されている日本人の多くが、いずれも著しく高齢であることだ。

 これは、たぶん、偶然ではない。

 現在70代に突入している、いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる世代は、数が多いだけでなく、活力に溢れた人々だった。若い労働力として敗戦からの復興を成し遂げ、1980年代から90年代にかけては、未曽有の経済的繁栄をけん引している。