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(イラスト=小田嶋 隆)

 出版の世界で生きる人間の1人として、近年ますます増殖中の、いわゆる「嫌韓」「嫌中」本の存在に心を痛めている。過日、さる書店関係者と話をする機会を得たので、どう思うのか尋ねてみた。と、あの種のいわゆる「ヘイト本」に、誰よりも強く苦しんでいるのは自分たち書店の人間だというお答えだった。

 聞けば、都心やターミナル駅に店舗を構える大型書店や、全国に支店網を展開するチェーン店でない限り、一般の書店に並ぶ書籍の種類と冊数は、「取次」と呼ばれる流通業者が、一方的に決めるものであるらしい。ということはつまり、書店の側が、どの本を何冊仕入れて、どの本の配本を拒否するというふうに仕入れの詳細をコントロールするのは事実上不可能に近い。であるからして、普通に商売をしている限り、どうしても一定数のヘイト本を売りさばかなければならない。

 売り上げが見込めるからという理由で、「ヘイト本」を目立つ書棚に展開すればしたで、書店としての見識を疑われる。それどころか、その種の本を置いているだけで、店に不信感を抱く常連客がクレームをつけてきたりする。そんなこんなで、心ある書店の経営者たちは、顔を合わせるたびに、その種の「嫌韓」「嫌中」本の扱いについてあれこれ悩みを打ち明け合っているという。なんだか悲しい話だ。

 と、そんな話に憂いをともにしているところへ、小学館が発行している総合週刊誌「週刊ポスト」の中づり広告が飛び込んできた。見ると「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ」「韓国なんて要らない」「東京五輪ボイコットで日本のメダルが2桁増?ほか」と目を疑う凶悪な文言が並んでいる。