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(イラスト=小田嶋 隆)

 出版業界の関係者が集まると、話題はいつしか自分たちが遭遇した失敗や災難をめぐる話になる。多くは締め切りの遅延と督促をめぐる駆け引きや、印刷所との押し問答を含んだ悲喜劇なのだが、デザインまわりの人たちは、こういう場合、必ずや「写真の裏焼き」にまつわる“武勇伝”を持ち出してくる。

 図版がコンピューター上のファイルとしてやりとりされるようになった後は、その種の事故の話をあまり聞かなくなったものの、21世紀の初頭までは、「裏焼き」は、デザイナーが決して犯してはいけない一方で、ちょっと気を抜くとやらかしてしまいがちなミスの筆頭に挙げられる悲劇だった。