アルツハイマー病治療の本命とみられてきたアミロイド標的薬の治験は失敗が続く。そのため、脳のリンパ系や免疫系に目を向けるほかの治療法の研究に光が当たり始めた。発症前に兆候を発見する診断法を含め、新たな手法への投資が始まっている。

 英ケンブリッジ大学ガードン研究所のリック・ライブシー教授は、研究室に設置された培養器の扉を開け、小さなプラスチックのプレートを取り出した。プレートには6つのくぼみがあり、それぞれが薄いピンク色の液体で満たされている。そこに入っているのは、アルツハイマー病患者の皮膚から最近作製したばかりの培養幹細胞だ。

 次に同教授が取り出した同じようなプレートには、摂氏37度で70日間成長させた細胞がのっている。こちらの幹細胞は神経細胞へと変化しており、集まって脳組織の小さな塊になっているのが分かる。

 3枚目のプレートにのっているのは、ミクログリア(小膠細胞)という特別な細胞だ。ミクログリアは免疫防御を担っており、最前線で脳を守っている。この細胞は、アルツハイマー病の発症に重要な役割を果たすと考えられている。