EUに加盟する小国の一部で、英国のEU離脱に伴う影響が表れ始めている。ルクセンブルクでは英系金融機関がプロジェクトを凍結。アイルランドも貿易額の減少に身構える。対外直接投資や貿易などで英国に依存してきたEUの小国は、厳しい局面を迎える。

<b>ルクセンブルクでも英EU離脱の影響が表れ始めた</b>(写真=Getty Images)
ルクセンブルクでも英EU離脱の影響が表れ始めた(写真=Getty Images)
ロンドン支局 蛯谷 敏
2000年、日経BP社に入社。本誌編集部で2006年から通信、ネット、金融、政治などを担当。日経ビジネスDigital編集長を経て2014年4月からロンドン支局長。

 「ルクセンブルクで、英系金融機関のプロジェクト凍結が増えている」。ドイツの研究機関、Ifo経済研究所で英国の欧州連合(EU)離脱の影響を分析しているガブリエル・フェルべマイヤー氏はこう語る。立地の良さや高度人材の確保のしやすさからルクセンブルクには、多くの大手金融機関が拠点を置いてきた。英国がEUを離脱した後の英系金融機関の移転先としても注目されている。

 ところが、現実にはビジネスを停止する動きが相次いでいるという。理由は、先行きの不透明感だ。「離脱交渉の行方が分からないため、英系金融機関はデリバティブや債権運用などのプロジェクトを一旦、本国に引き揚げている」とフェルべマイヤー氏は説明する。

 ルクセンブルクの経済が金融業に依存しているのは有名で、特に英国の金融機関との関係は深い。英シンクタンクのグローバル・カウンシルによると、2014年のルクセンブルクにおける英金融機関の総資産残高はGDP(国内総生産)比で365%もあり、EU加盟国では突出している。同国のGDP574億ドル(約6兆4000億円、2015年)のうち金融サービス業は3割に達するとされるため、英銀行のプロジェクト凍結が増えれば基幹産業に打撃を与えかねない。

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