70年前に結ばれたブレトンウッズ協定に、黒字国からの輸入に制限を加える「稀少通貨条項」があった。ケインズの発案に基づくこの条項は、歴史的な経緯の中で発動されることはなかった。しかし、今日の貿易不均衡を是正するには同様の発想に基づく措置が必要と、筆者は主張する。

 米国のトランプ政権から、保護主義に基づく発言がしきりに聞こえてくる。持続的な貿易不均衡を是正するための、明らかに有効な方策があるにもかかわらず、誰もその発動を求めようとしない。言及さえしないのは不思議なことだ。その方策とは、1944年のブレトンウッズ協定に盛り込まれた「稀少通貨条項」である。

忘れられたケインズの提案

 この条項は、同協定の第7条に記されている。加盟国に、「ある通貨が稀少となった場合、国際通貨基金(IMF)に助言を求めた後、当該通貨による取引の自由に一時的な制限を加えることを認める」というもの。また、その国が「制限の内容を決定する完全な権限」を有することも認めた。

 外国為替市場においてある国の通貨が稀少になるのは、輸入が輸出を超過している状態、つまり経常赤字に陥っていることを意味する。