国民の敬愛を集めたプミポン前国王の火葬式が行われ、30万人以上の追悼者がバンコクに殺到した。「国父」を失った状態で、来年秋に総選挙が実施される。タイが改めて民主主義の実現に挑む。だが選挙中、そして選挙後も軍の影響が色濃く残りそうだ。軍は政情安定の要になっている。

バンコク支局 飯山 辰之介
2008年、日経BP社入社。製造業や流通業などを担当。13年、日本経済新聞に出向。15年に日経ビジネス編集部に復帰し、17年9月からバンコク支局長。
<span class="fontBold">プミポン前国王の葬列。10月29日をもって、約1年にわたる喪が明けた</span>(写真=AP/アフロ)
プミポン前国王の葬列。10月29日をもって、約1年にわたる喪が明けた(写真=AP/アフロ)

 10月26日、1年前に死去したプミポン前国王の火葬式がバンコクで行われた。王宮周辺にタイ全土から30万人を超える人々が押し寄せ、70年にわたって君臨した前国王の死を悼んだ。葬列を一目見ようと、一部の追悼者は前日から炎天下の路上に座り込み、葬列が姿を現すと地面に突っ伏して別れを惜しんだ。

 前国王は「国父」と呼ばれ、政情不安が恒常化しているタイの「最後の調停者」として国民から絶大な信頼を集めた。その死去は今後のタイの政治状況にどう影響するのか。あるタイの企業経営者は「想像もつかない」と話す。

 2014年のクーデターで実権を握った軍事政権を率いるプラユット暫定首相は10月10日、何度も延期してきた総選挙を来年秋にも実施する見通しを明らかにした。

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