トルコのサウジアラビア総領事館内の記者殺害事件を受けて、サウジとのビジネスを見直す機運が高まっている。中東の安定に大きな政治的役割を果たしていると主張するサウジだが、ビジネス面での存在感は小さい。政権が国民生活のあらゆる動きを監視し、口出しする限り、深い関係を持とうとする企業は出てこないだろう。

 サウジアラビアが建国からさほど時がたっていない国であることを我々は忘れがちだ。1932年にこの王国を興したイブン・サウド氏は建国当初、国中にあった宝物を1頭のラクダの鞍に載せて運んだといわれている。38年に米国が油田を掘り当てた時、約60年後に世界で最も影響力を持つ石油鉱物資源相となるアリ・ヌアイミ氏は、靴も履かず身なりも汚い砂漠の子羊飼いだった。

 サウジとのビジネスを望む企業は、この国のこうした歴史の浅さに今までもたびたび足をすくわれてきた。石油から得た莫大な富や、米国式の教育を受け、完璧な英語を話す官僚たちに感銘を受けた外国企業は、王族と彼らを取り巻く廷臣たちが今でも国のすべてを牛耳っていると知って、落胆する。

世界各地でカショギ氏殺害に抗議するデモが起こっている(写真=ZUMA Press/アフロ)

 だがそうだったとしても、今回のような衝撃的な事件が起きるとは思いもよらなかっただろう。サウジ人記者、ジャマル・カショギ氏の殺害は、まるで中世の出来事である。カショギ氏はこれまでサウジ政権への批判を繰り返しており、米ワシントン・ポスト紙でコラムニストとして活動していた。同氏は10月2日、イスタンブールにあるサウジ総領事館で殺害されたとみられている*。