プレシジョンメディシンは、疾患を引き起こす遺伝子変異に合わせて施薬する治療法だ。がん治療の分野では、診断、検査、治療薬、情報支援の各面でプレシジョンメディシンを後押しする技術開発が進む。がん治療は肺がん、乳がんといったがん種に基づく治療から、遺伝子変異などの特性に基づく治療へと変わる。

 1990年代にヒトゲノムの解析が始まって以来、医師たちは、「プレシジョンメディシン(精密医療)」の時代がいずれ訪れると予測してきた。プレシジョンメディシンとは、それぞれの患者に、その人の疾患の要因となっている特定の遺伝子変異を標的とする薬を投与する治療のこと。

 こうした革新的な医療が最も切実に求められているのは、がん治療の分野だろう。一言で「がん」といっても、多様な遺伝子変異によって引き起こされる数多くの疾患を表す。

 ヒトゲノムの解析完了から14年。科学者の中には、プレシジョンメディシンの時代が既に到来していると見なす者もいる。彼らによれば、標的を絞った新世代の治療薬が登場しており、それらが、がんの化学療法の主役の座を奪い取るだろうという。そうなれば多くの患者は、腫瘍細胞ばかりでなく正常な細胞まで攻撃してしまう乱暴な治療を受けずに済むようになる。