11月の米中間選挙は2年前にドナルド・トランプ氏が大統領に当選したのは「事故」か否かを問う重要な選挙。中間層に向けて積極的にメッセージを発する進歩主義者の存在は、米国の将来にとって救いとなっている。しかし、カネにものをいわせる米国の選挙は腐敗しているだけに、有権者は投票に出向き、意思をはっきり示さねばならない。

ジョセフ・スティグリッツ氏
1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学で経済博士号取得。95~97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97~2000年世界銀行のチーフエコノミスト。2001年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学経済学部教授。2011年に米誌「タイム」の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。『世界の99%を貧困にする経済』など著書多数。

 11月に議会の中間選挙を控えた米国に、世界の目が注がれている。この選挙の結果は2年前に一部の人々が抱いた疑問に対する答えとなるだろう。そう、ドナルド・トランプ氏が大統領選挙に勝利した時に生まれた憂いのことだ。

 米国の有権者は、トランプ氏が米国の本質を示す人物ではないと宣言するのか。トランプ氏の人種差別的で女性蔑視的な態度と移民排斥主義、保護主義にノーを突きつけるのか。米国第一主義を掲げ、国際社会の法規範を無視するトランプ氏のやり方が米国民の意思にそぐわないと表明するのか。はたまた、大統領選挙におけるトランプ氏の勝利が“歴史的な偶然”ではなかったこと──すなわち予備選挙で共和党が欠点のある候補を生み、民主党がトランプ氏にとって“理想の”相手を擁立したからこそ起きた事故ではなかったことを、はっきりさせる結果になるのだろうか。

 今回の選挙には米国の命運がかかっている。そのため、2年前の選挙結果を招いたのが何だったか、専門家の域を超えた熱心な議論が繰り広げられている。

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